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わたしが子どもだった頃、長谷川一夫主演で『日蓮と蒙古大襲来』(1958年)という大映映画がありました。
蒙古襲来を知った日蓮上人が博多の海辺で夜を徹して祈り続け、その祈りが天に通じたのか、暴風雨が吹き荒れて……という映画で、「歴史スペクタクル」と銘打った映画ですが、歴史的事実とは異なった商業映画です。 日蓮の祈りで蒙古襲来という国難を避け得たという「説」はかなり古くから流布されています。 画像元:http://minkara.carview.co.jp/userid/157690/spot/307332/ ![]() 時代背景としては、明治27年=日清戦争、明治37年=日露戦争ですから、アジアに対する対外膨張主義の国威発揚運動の一環として建設されたことは明らかです。 『江戸名所図会』(1836年)巻七によると、押上の最教寺に、「鎌倉将軍惟康(これやす)親王、 蒙古鎮制のために書かしむる ところの日蓮上人真蹟の曼荼羅(マンダラ)の旗あり」と書かれています。最教寺は戦災で八王子市に移転しました。 鎌倉将軍惟康親王とは源氏が三代で亡びた後の第七代将軍。 その曼荼羅とは上下に八代龍王を描き、四角(すみ)に四天王を描き、中央の丸い輪の中に「南無妙法蓮華教」そして諸仏の名前が小文字で埋め尽くしたもので、丸印に描かれているから「日の丸」曼荼羅といわれています。 鎌倉将軍惟康親王が博多まで持参し、この旗を立てて蒙古軍を蹴散らした--という図が『江戸名所図会』にも載っています。 http://otonanonurie.image.coocan.jp/2006/03/0604.html参照 最教寺住職に電話で問い合わせたら「曼荼羅の旗はあるけれど江戸時代のものらしい」とのことでした。 『立正安国論』で「日蓮は日本国の棟梁なり。余を失うは、日本国の柱を倒すなり。」と宣言し、 「自界反逆難で、北条一門同士討ちになり、他国侵逼難(たこくしんぴつなん)で他国の侵略にあう。建長寺・極楽寺等一切の念仏者・禅僧の寺は焼き払い、その首を切らなければ、日本国は亡びるのだ」と予言しました。 予言通り、北条一門の同士討ちは起こり、蒙古が襲来してきました。しかし日本国は滅びませんでした。 日蓮を困惑させたのは、諸悪の根源である他宗派は健在であり、鎌倉幕府が日蓮宗に帰依しないままで蒙古軍が滅びたことでした。 大映映画では、博多の海岸で日蓮が必死に敵国調伏の祈りをささげ大嵐を呼んでいる時期、実際の日蓮は山梨県・身延山におりました。 日蓮の「日の丸」を掲げて惟康親王が進軍した事実もありません。親王はずっと鎌倉にいました。 二度目の元寇の際、日蓮は『小蒙古御書』なるものを書き、「蒙古襲来については軽々しく口にするな」と門人に回覧させています。 二度目の元寇も日蓮の予期に反し、蒙古が壊滅したという弟子からの知らせを受け取った時、日蓮は「そんなはずがない。この日蓮を陥れるためのデマだ」と言いました。『富城入道殿御返事』 中世が専門の歴史学者・網野善彦氏は「日蓮は実は元寇が日本を征服することを望んでいた」(講談社『日本の歴史10』)とまで言い切ります。 日蓮が蒙古調伏の祈祷を行ったということは歴史的事実に反します。 そうあって欲しかったという後の信者が作り出した絵空事です。 絵空事も時間がたち、事情を知らない人が多くなると、偽物の証拠が作られ、真実らしく立ち現れてくることに注意が必要です。 あの巨大な銅像が絵空事であるとは…。信じた人には無惨なことです。国粋主義者は往々にしてこのような勇み足をいたします。 絵空事だと自由に言えるようになるのは戦後もだいぶたってからのことでした。 補足1:軍国主義者 日蓮の信者には著名な軍国主義者が多い。「八紘一宇」(世界を一つの家にするの意)という戦前の対外侵略のスローガンを明治36年に考案した田中智学。翌年には日露戦争が始まる。 バルチィック艦隊を撃破した東郷平八郎。 満州事変・満州国建国の立役者にして「(世界)最終戦争」をたくらむ軍人石原莞爾(かんじ)。 2.26事件の理論的支柱で『日本改造法案大綱』の著者・北一輝。 テロ組織「血盟団」を主催し、井上準之助と団琢磨を暗殺させた井上日召(にっしょう) ![]() 1932年(昭和7年)2月16日、奉天(現・瀋陽)で開かれた「満州建国会議」の記念写真。満州各地の4人のリーダーと本庄繁関東軍司令官、板垣征四郎大佐、石原莞爾中佐など。 わざわざ日蓮の誕生日に開かれた会議の会場には南無妙法蓮華経の曼荼羅が飾られています。 補足2:平和主義者 「宇宙全体が幸福にならない限り個人の幸福はありえない」と言った宮沢賢治も上述の田中智学の薫陶を受けています。
by hangeshow
| 2008-10-07 20:42
| 中世
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