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「複数の太陽が昇り、これを射落とした」という神話は岡正雄氏の『太陽を射る話』に詳しく載っています。太陽の数は、2・3・7・9・10とまちまちですが、インドネシア・タイ・中国・トルコ・モンゴル・日本・西部インディアンにも分布しているそうです。
旧石器時代(氷河時代)から新石器時代に変わる頃、地球は急速に温暖化してきて今日の気温になったことが学者の研究で明らかになっています。 生活環境がガラッと変わり、暑くなって死にそうだと思った人々によって生まれた、起源の古い神話だろうと言われています。 江戸時代の『広益俗説弁』に載っているという話を紹介しましょう。 “垂仁天皇の御代のこと、九つの太陽が空にかがやくという不思議がおこった。天文博士の占いによると北の端の太陽が本物で、南にならんでいる太陽はカラスの化けたものであり、地上から八町(約九百メートル)の高さにある。射落とさないと天下の大事件になるだろうということだった。 弓の名手八人に勅命が下り武蔵国入間郡に高い足場が組まれ、射落とす準備が整うと,天皇はこれを見るため武蔵に行幸された。八人の射手が神に祈念して矢をはなつと、八本の矢はみごとに太陽にあたって、筑紫国日向国宮崎郡に落下した。 難波の都に帰還した天皇のもとに落下した八つの太陽が献上された。身長一丈五尺(約4.5m)、尾の幅は一丈六尺(約4.8m)、くちばしは三尺八寸(約1.1m)もある大きなカラスであった。 その首を切ってみると、玉が一個ずつはいっており、そのなかにそれぞれ一寸六分(約5cm)の釈迦像が一体おさまっていた。その八つの玉を各地の神社にまつり、八人の射手たちには坂東八か国、天文博士にも領地が与えられた。“ さて本場の中国でも記録された書籍によってかなり差がありますが、まとめると次のようになります。 “尭(ぎょう)帝の時代、十個の太陽がいっせいに空に昇り、大地は焼け焦げていきます。天帝は、仙界に住む「げい」という弓の名人に地上に降りて、地上を正常に戻すように命じます。 げいは弓を構えて、太陽に引っ込めと命じますが、一向に引っ込む様子がない。それで次々に矢を放ち、九個の太陽を射ると、九羽のカラスが落ちてきました。空に残った一個の太陽は、殺さないでと哀願したのでげいは許し、世界は救われます。 ところがこの殺されたカラスは天帝の子どもだったから、「脅かして引きかえらせば良いものを殺してしまうとは‥」と激怒し、げいは仙界に復帰できなくなります。 復帰する手立てをいろいろ調べてみると、世界の西の果て、崑崙山(こんろんさん)に住む西王母(せいおうぼ)が持つ薬を一つ飲めば不老不死となり、二つ飲めば仙界に復帰できることがわかりました。 苦労の末に西王母に面会を果たしたげいは、二粒の薬をもらいましたが、ふと妻をどうするかと悩み、さしあたってこの薬を飲まずに隠しておきました。 げいの妻も仙界の女ですから大変な美人です。二人で仙界に戻るには四粒必要です。仲良く一粒ずつ飲んで人間界で不老不死で生きるのも気がすすまないし、妻を地上にひとり残して自分だけ仙界に戻ることも薄情だし‥と悩んでいたのです。 ところが、妻(嫦娥(じょうが・こうが))は悩まない。薬を発見すると、これを盗んで仙界に戻ります。仙界に一足飛びでもどるのも芸がないと思ったのか、月に寄ってから行こうとします。 月は西王母が支配する星で、不老不死の薬を配下のウサギが作っています。桂の木があり、何度切り倒しても復活するそうです。(月桂樹) 嫦娥の自分勝手さに怒った西王母は彼女の姿を醜いガマガエルの姿にし、永遠に月に留め置くことにしました。だから月にはガマとウサギがいるのです。“ 一説によると嫦娥は美しいまま、月の世界で孤独という罰に耐えながら暮らしているそうです。 一説によると泥棒に盗まれそうになった薬を渡すまいとして、何の薬かも知らずに嫦娥が飲んでしまったといいます。 また一説によると、げいは元々人間で、英雄として人々から尊敬され、王侯貴族のように楽しく豊かな生活をおくっているうちに不遜にも不老不死を願うようになった。妻・嫦娥は夫の野望を阻止するために自らその薬を飲んで死んだ――天界に昇ったとされています。 ガマの話よりロマンチックな薄幸の美女の話の方が人気があるらしい。十五夜に中国では家族で月餅を食べる習慣があり、月を見ると嫦娥を思い出すのだといいます。 民俗学的に言えば、満月(月餅)を食べることによって、自身の満月化(不老長寿・長寿長命・無病息災)を祈願する呪術的な行事といえるでしょう。 蛇足になりますが、月餅を他人に贈ることは、その人の永遠の栄華・栄達を願うことになります。月塀を贈ることはワイロの意味合いにもなるようです。饅頭の下の小判のような感じでしょうか。 2005年、中国政府は超豪華な月餅の贈答を禁止しました。 2007年に中国が打ち上げた月探査周回衛星は「嫦娥」と名づけられました。この場合もガマガエルではないでしょうなぁ。月にすむ美しい仙女・嫦娥にちなんだものでしょう。 月にウサギの話はインドの仏教説話にもあります。 行き倒れの老人を助けるために、サルは木の実や果物を集め、キツネは川から魚を捕ってきた。ところがウサギは何も採ってくるものがなかった。ウサギはサルとキツネに火を焚くように頼み、「せめてわが肉を食べてほしい」と言って燃え盛る炎の中に身を投じたという。 老人は帝釈天であった。ウサギの慈悲行に感じ入った帝釈天により、ウサギは月に送られて復活したという。 月の満ち欠けを、昔の人は「死んでも復活する」と思い、不老不死の象徴としてきたことは良くわかります。 ガマが不老不死に関係あるのも理解できます。ガマはイボイボだらけでずいぶん年寄りの雰囲気があります。しかも冬眠し、春には土の中から這い出してきます。 しかしなぜ、ウサギが不老不死、あるいは月と深い関係があるのかはよくわからない。 どなたか教えてくださいませんか。 さて前回述べた馬王堆遺跡の女主人とからめて述べれば、夫は妻が天界・仙人界で不老不死の生活をおくってもらいたいと思い、さまざまな生活道具とともにあの衣装を妻に贈ったわけです。 そして2000年経ってもかのご婦人は生きているがごとしであった。おそるべき中国古代の科学技術。 あと一歩で本当の「不老不死」の薬が手に入る、と当時の人々は信じていたことでしょう。
by hangeshow
| 2008-08-07 18:43
| 太陽の話
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